引越しを専門で行う業者は今では普通にありますが、その歴史はそれほど長くはありません。
こちらでは、引越し専門業者が誕生してから現在までの変遷と価格競争についてお伝えしたいと思います。
引越し業界の拡大
日本において引越し専門の業者が誕生したのは、1970年代に入ってからの事です。
大手引越し業者の「アート引越センター」や「サカイ引越センター」などもこの時期に引越し業に参入しています。
また引越しではありませんが、ヤマト運輸が個人宅を結ぶ宅急便を始めたのも同時期です。
「引越し専門業者」と「宅急便」の誕生は、これまでのトラック運送業界と全く違う業務内容になり、当時運送業の2大革命とも言える事柄でした。
その後もこの2つの事業は年々業績を上げ続け、全国的に事業を拡大して行きました。
引越し相談窓口の誕生
引越し業が全国展開していく中で、消費者からの引越しに関する相談も増えて行きました。
そこで全国引越協では「ひっこし110番」という相談窓口を設置したのです。
そこでは、引越しの経験が多くある主婦500人の中から選ばれた女性が、相談員として相談を受けていたそうです。
相談の事例には、つぎのようなものがありました。
相談例1 安心して任せられる引越し業者を選ぶにはどうしたらいいですか?
長年地元で実績のある業者や、万一の際に補償サービスのある業者が安心出来ます。
最近引越しした人に話を聞くのも有効です。
また、担当者の名刺や見積書は取っておくようにしましょう。
相談例2 引越し業者はどこまでの事をしてくれますか?
大型家具や家電の運搬・設置はもちろん行います。
エアコンの取り付けや部屋のルームクリーニングなどは業者によって異なるので、見積もりの際に確認して下さい。
引越し業界で価格競争が始まる
企業の転勤の際の引越しでは、これまでは1社のみと契約を行う専属契約が主でしたが、1990年代後半頃からのコスト削減の流れの一環で、複数社と契約を結ぶ会社や、そもそも契約はせず転勤での引越しの時には個人で引越し業者と契約を結ばせるというようなケースが増えて行きました。
それまでの転勤の際の引越し費用は、多少値段が高くても会社が全額負担してくれていたので、それほど気にせず契約されていましいた。
しかし個人で契約しなくてはいけなくなり、しかも料金の一部は個人負担となると、少しでも安い業者を探して契約したいと思うのは当然の流れです。
そのため、引越し業者間の価格競争が勃発したのです。
デフレによる引越し業者への影響
価格競争の流れは引越し業界に大きな打撃を与えました。
繁忙期である3月や4月であっても、価格を下げなければいけなくなり、売上高は減る一方でした。
さらに発注の件数が増えれば、一時的な人件費がかさみ、薄利多売という状況になりました。
運送業では規制や参入条件が緩和により、引越し業に新規参入する業者は増えましたが、価格競争に敗れ倒産・廃業して消えていった業者も沢山あります。
このように1990年代以降は、リストラやコスト削減の流れを受け、法人契約は値下げを余儀なくされました。
大手企業ではそれほどの値下げを求められない事もありましたが、中小企業や個人向けの引越しでは、価格はどんどん下がって行く一方になり、契約件数は増えても売り上げは伸びないという状況になっていました。
単身パックの利用率の上昇
1990年代後半は、小口の単身パックの利用率がそれまでよりも高くなった時期でもあります。
企業では転勤の時期を春に集中させるところが多く、引越し業者の引越し件数の4割が春に行われるものです。
2年や3年の周期で定期的に転勤させる企業も増えています。
そうなると単身で引越しするという人も多くなり、単身パックの需要も増えたのです。
まとめ
このように、引越し業界は時代とともに変化して来ました。
現在では、引越しの約8割が単身引越しとなっているため、各業者ともに単身者向けの引越しプランに力を入れています。
これからも時代の移り変わりに合わせて、変化して行く事になるでしょう。
コメント